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扇子の知識

平安貴族の持ち物であった檜扇からはじまり、蝙蝠(かわほり)と呼ばれた紙扇子、明治期に海外輸出用につくられた絹の絵扇まで、歴史の中で変化してきた扇子。現在私たちが使っている扇子にも、布張りのもの、紙製のもの、白檀や紫檀の薄板を綴じたものなどがあります。プラスティックの骨やレース使いなどディテールに変化はありますが、基本的な構造や種類は扇子の生まれた平安時代からあまり変化していないようです。本来の涼を取るという用途以外にも、位を表す儀式用品、舞や落語の小道具、色紙や名刺の代わり、おめでたい場での引出物など、さまざまに愛用されてきました。長く使われている道具だけに、ことわざや文芸、デザインの中にも扇子は多く登場しています。肝心要という言い回しや、地紙模様と呼ばれる着物の柄もありますね。

■扇子のかたち

​地長(じなが)

扇骨部分が短く、扇面部分が長い。
扇面部分に絵柄があるもの、刺繍やプリントなどが施してあるものが多く、布張りであれば綿や麻などしっかりした生地が使われます。

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​短地(たんち)

扇骨部分が長く、扇面部分が短い。
扇骨の数が多く密であるもの、扇骨部分に絵柄や透かしのあるものが多く、布張りであれば薄い絹地が使われます。

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​その他

扇の角を落としたような丸みを帯びた帆立型(シェル型)、薄く削いだ木の板をテグスで綴じ合わせた木扇などのデザインがあります。

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■良い扇子のポイント

​開閉がスムーズ

開閉がスムーズな扇子とは、パラパラと開いてパラパラと閉じるイメージで、使うことが楽しくなる扇子です。

そのような扇子に仕上げるには、第一に、扇骨と扇面の貼り合わせが均質で、折りたたんだそれぞれの面の中央に、等しく骨が貼り合わされている必要があります。等しく中央に骨が貼り合わされていると、畳んだときに歪みがなく、平らな面に置いても、ガタツキがありません。

 

第二に、扇面の厚みと骨の厚みのバランスが合っている必要があります。扇面には折りぐせをつけていますので、開くためには骨で広げる力が必要です。また、閉じる場合にも開いた扇面を折りたたむ力が骨に求められます。生地の厚みに対して、骨の厚みが適正でないと、生地の力に負けて、折り畳みにがし辛い扇子に仕上がります。

 

第三に、要の締め具合が適切である必要があります。締めがきついと、閉じる場合に骨が重なり合うことがあり、締めが緩いと開いて仰ぐ時にぐにゃぐにゃした感じで使い心地が悪くなります。

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​風がよく来る

扇子の機能の大きな特徴は扇ぐと風が来ることです。

扇子には、開いたときに扇面の割合が大きい地長と呼ばれるものと、扇面の幅が小さく骨の面が大きい短地と呼ばれるものがあります。地長は扇面で風を起こすので、扇面の材質は空気が抜けにくい紙や、目の詰まった綿地を使うとよく風が来ますが、直接的でバサバサとした風になります。一方、短地の扇子は扇骨で風を起こすので、骨数が多く、骨と骨の間隔が詰まったものがよく風が来る上に、竹自体がしなることで、柔らかい風となり優雅な感じに扇げます。

適度な重み

扇子には、加工がしやすく、よくしなる割に折れにくい性質の竹が好んで使われてきました。竹は中が空洞ですが、外側の皮の部分に比べ、内側に行くほど柔らかくなります。扇子に使うには、固くしなりがあり、折れにくい皮側の部分が適しており、従来は内側はあまり使われませんでしたが、最近では廉価な扇子を作るために、以前は使われなかった内側も使うようになってきました。外側と内側では竹の繊維の密度が異なり。外側はよく詰まっていますが、内側はカスカスしており持った時に軽く感じるのが特徴で耐久性に劣る場合が多いです。扇子は開閉するために、骨に力が加わるため強さが必要ですが、強い竹は弱い竹に比べると、相対的にやや重くなります。

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